少子高齢化に伴って全国で深刻化する人手不足の荒波が、成長都市・福岡市の老舗飲食店を襲っている。中央区大名の料亭「稚加榮(ちかえ)」が、45年間続けたサービスランチを今月25日で終了。中央区天神のそば店「飛(とび)うめ」は、天神地下街で40年以上営業してきた支店を昨年末で閉じた。いずれも業績は好調だったが、働き手を確保できなくなったため、泣く泣く事業縮小を決めたという。
稚加榮は1961(昭和36)年、筑豊の炭鉱主として財を成した中島徳松(1875-1951)の別邸を改装し、水炊きなど鳥料理を目玉にした料亭として創業。73年に大型のいけすを導入し、魚料理を中心に高級感のある料亭としてにぎわってきた。
「料亭は敷居が高い」というイメージを変えようと、サービスランチを大名の福岡本店で73年から、北九州市の小倉店でも77年に始めたところ、名物に。本店では活魚や天ぷらを中心に会席料理風の定食を1日400食程度(平日)を提供。先着100人に魚料理が付く特典があり、店の前には長蛇の列ができる。
ところが本店は、50人ずついた板前と仲居が高齢化し、ここ数年で30人ずつにまで激減。人材を募っても思うように集まらず、平日の昼食営業を断念せざるを得なくなった。サービスランチの長年のファンだった福岡県大野城市の女性(50)は「おいしくて豪華で、1500円で料亭気分を味わえる。食べられなくなるのは寂しい」と嘆く。本店は平日のサービスランチを25日で終える代わりに、土日祝日に昼間の営業を始める。小倉店のサービスランチは継続する。
人手不足の波、老舗飲食店にも 料亭「稚加榮」名物ランチ休止 そば店「飛うめ」支店撤退 福岡市 “雇用ミスマッチ”浮き彫りに