「本来は着岸拒否もできた」。新型コロナウイルスの感染が広がるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。国際法上の「旗国主義」や日本の権限、義務について考えます。
国際法では公海上の船舶は所属国が取り締まる「旗国主義」という考え方をとる。国連海洋法条約で、公海上の船舶は旗国の「排他的管轄権に服する」と明記する。旗国の義務として「行政上、技術上および社会上の事項について有効に管轄権を行使しおよび有効に規制を行う」と定める。
例外として(1)海賊行為(2)奴隷取引(3)無許可の放送(4)無国籍や国籍を偽る――という外国船舶の取り締まりを認める。今回のような感染症拡大の防止は想定していない。
日本の領海を航行中であっても外国船籍の船舶は陸上と同等の日本の管轄権は及ばない。犯罪の結果が日本に及ぶ場合の刑事裁判権や、領海通航中に発生した債務や責任に関する民事裁判権などに限られる。
東京・中央の「カーニバル・ジャパン」が運航するダイヤモンド・プリンセス号には乗員・乗客約3700人が乗っていた。17日時点で延べ1723人を検査し、感染者は計454人に上る。1月20日に横浜を出発後、鹿児島、香港、ベトナム、台湾、沖縄を経て、2月3日夜に横浜沖に停泊した。
クルーズ船では乗員・乗客の集団行動や共用設備が多い。運航中に新型コロナウイルスが広がったとみられる。公海上にあった同船舶には国際法上、日本が感染拡大の措置を講じる権限や義務はなかった。義務を負っていたのは船舶が籍を置く英国だった。
「本来は着岸拒否もできた」。新型コロナウイルスの感染が広がるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。国際法上の「旗国主義」や日本の権限、義務について考えます。#新型肺炎 #コロナウイルス #COVID19
▶️クルーズ船対応「旗国主義」の穴 義務なかった日本https://t.co/nyigZ4iScx pic.twitter.com/0y9KiiMDTb
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2020年2月17日