子供時代とは全然違う男女の腕力の決定的な差に気がつくのって、初めて異性とお付き合いした時かもしれないな。
大学1年の時の彼氏(彼は、女の子と付き合うのは私が初めてだった)は大柄でもなく、その年齢の男子としては平均的な体格と筋力で、若干細身なくらいの男の子だった。
私も身長体重ともに女の子の平均サイズ。
たまたま二人で腕相撲して遊んでいた時に、私があまりにも手応えなくあっけなく負けるので、
「そんな露骨に手加減するなよ、本気出したらそんなもんじゃないだろ!」
と笑顔でからかわれて、私が
「これが全力だよ」
と言っても
「そんなはずないだろ」
とキョトンとして本当に信じてくれなかった。
それで、本気で腕力差をわかってないんだなあ、と思って、
「じゃあこれから私が死ぬ気で抵抗するからねじ伏せてみて」
私は言って、二人で取っ組み合いをした。
私は本当に死ぬ気で全力で抵抗した。
彼は若干手加減してたくらいなのに、開始十数秒で私はあっという間に馬乗りになられて床にねじ伏せられて、身動きもできなくなった。
「え… これがマジで全力なの?」
と、彼はかなり青ざめていた。
私が特別にか弱いわけじゃなくて、女子なんてみんなこんなもんだよ。
格闘技でもやってなきゃ、男の人に腕力では絶対にかなわないんだよ。という話をした。
それから彼は私の帰りが遅くなると絶対に送り迎えしてくれるようになったし、
なぜ女性が見知らぬ男性をこうも警戒するのか心の底から腑に落ちたと言ってた。
おまけにそれからしばらくの後、彼は満員電車で大柄な男性から痴漢されるという体験までしたので(取っ組み合いの喧嘩をしたけど敵わなくて逃げられたらしい)、体格や腕力の強い者に狙われる恐怖感を理解したらしく、
女性や子供のおかれている境遇をほんとうに理解してくれるようになったし、女子供は身近にいる男性が守る必要があるんだ、という自覚がとても強くなったようだった。
この感覚を知っている男性たちは、世の中にたくさんいると思う。夫や父親ならなおさら。